職場が難しいのは、関わるかどうかを自分で決められないからです。
友人であれば、誘いを断り、返信を遅らせているうちに関係は自然と薄れていきます。ところが職場では、苦手な相手とも仕事の話をしなければなりません。同じ会議に出て、同じフロアで一日の大半を過ごします。
もうひとつ、関係を悪くしたときの影響が大きいという事情もあります。相手が上司なら評価に響くかもしれません。露骨に避ければ周囲が気づき、職場全体の空気が変わってしまうこともあります。距離を置きたい、けれど置いたあとが怖い。この板挟みそのものが、また消耗を生みます。
ここで多くの方がつまずくのは、距離を置く=相手を避けるという発想から抜け出せないところです。避けるという方法は、いきなり最終段階に踏み込むやり方です。実際には、その手前に打てる手がいくつもあります。
●第1段階:反応の温度を下げる
最初に試していただきたいのは、相手の言動に対する自分の反応を、一段だけ弱めることです。
苦手な相手ほど、私たちは機嫌を損ねないように過剰に応じてしまいます。メッセージが来ればすぐに返す。面白くない冗談にも大きく笑う。愚痴を聞かされれば、深くうなずいて相手の感情まで引き受ける。こうした反応は、相手にとって「この人はいつでも応じてくれる」という合図になり、結果として関わりを呼び込みます。
返信を三十分置いてから送る。相づちを「そうなんですね」に留める。感情的な話には共感を返さず、事実の部分だけを受け取る。無視をするわけではないので、相手にも周囲にも変化はほとんど気づかれません。それでいて、やりとりの主導権は少しずつ自分の側に戻ってきます。
この段階だけで楽になる方は、実は少なくありません。まずはここで様子を見てください。
●第2段階:話す内容を浅くする
第1段階で足りないと感じたら、次は話題の深さを調整します。
天気の話も、業務の話もします。けれど家族のこと、休日の予定、体調や悩みごとといった個人的な話題は渡さない。この線引きを決めておくだけです。
自分のことを話さないのは冷たいことのように感じるかもしれませんが、そうではありません。何をどこまで話すかを決める権利は、いつでもあなたの側にあります。相手の話は今まで通り聞きながら、自分の情報だけを控えめにする。踏み込まれる感覚は、これでかなり減っていきます。
すでに個人的なことを話してしまっている相手には、話題を過去のことに寄せていくのが自然です。進行中の出来事を渡さなければ、相手が入ってこられる余地は少しずつ狭くなります。
●第3段階:接触の量を減らす
それでも消耗が続くようであれば、接触そのものを減らします。ここが最後の段階です。
まず、減らせない接触と減らせる接触を分けてみてください。業務上必要なやりとりは減らせません。しかしランチ、休憩時間の同席、始業前の雑談、飲み会。任意の接触は、思っているよりたくさん残っています。
このとき大切なのは、その人だけを避ける形にしないことです。「今日は席で作業します」「最近は昼を短めにしているんです」というように、自分の過ごし方が変わったという形にしておくと、角が立ちません。相手にも、周囲にも、特定の誰かを避けているようには見えなくなります。