職場の⼈間関係

無視せずに、3つの段階で変えていく

職場に関わりたくない人がいるとき、多くの方が我慢するか離れるかの二択で考えてしまいます。けれど異動願いはすぐに通りませんし、それだけの理由で転職を決めるのも現実的ではないでしょう。この記事では、縁を切らずに距離を置く方法を、3つの段階に分けて紹介します。
朝、席についた瞬間にあの人の声が聞こえてくる。会議の席順を無意識に確認してしまう。飲み会の連絡が来るたび、行くかどうかより先に、あの人が来るかどうかを考えてしまう。
30代から50代の会社員の方から、こうしたご相談をよく受けます。相手は上司のこともあれば、同僚や後輩のこともあります。共通しているのは、避けようがないという点です。連絡先を削除するわけにもいかず、SNSをブロックするわけにもいきません。だから何年もそのまま過ごしている、という方が少なくありません。
ただ、我慢か決別かの二つしかない、というのは思い込みです。その間には、いくつもの段階があります。
なお、友人関係を含めた整理の仕方については「人間関係を断捨離したいときの進め方」でも紹介しています。

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気を使いすぎない

人間関係に疲れたと感じてしまう人は、気を使いすぎている人が多いのではないでしょうか。相手のちょっとした言動にいちいち反応してしまったり、自分の言動が相手にどう思われているのか心配になってしまったり、1つ1つに対して気を使いすぎてしまっていると人間関係に疲れやすくなってしまいます。気を使いすぎてしまうと、思っていることを言葉にできなかったり、言われたことを意識しすぎてしまったり、怯えながら行動することになってしまいどんどん悪い方向に行ってしまいます。そのような辛い状況を改善するためには、人が自分のことをどう思っているのかを考えないことです。人と関わるときの「考え方」を少し変えてみましょう。極端な言い方をしてしまえば、周りの人はそこまであなたのことを気にしていません。

あなたの言動1つ1つまでチェックしてくる人はいないので、気を使いすぎずに人と接するようにしましょう。そうすれば、人間関係に対して敏感になりすぎず、疲れてしまうことも少なくなるのではないでしょうか。

関わりたくない人がいるのは、心が狭いからではありません

はじめにお伝えしたいのは、苦手な相手がいること自体は問題ではない、ということです。
職場は、年齢も経歴も価値観も違う人が、仕事という一点だけで集まっている場所です。友人のように選んで集まったわけではありません。全員と気持ちよく付き合えるほうが、むしろ例外だと考えたほうが実態に近いでしょう。
それでも「関わりたくないと思う自分に問題があるのでは」と考えてしまう方は多くいます。真面目な方ほどそうです。そして相手のことを考える時間が増え、余計に消耗していきます。まずここを手放してください。合わない人がいるという事実と、あなたの人柄には関係がありません。

職場の人間関係が、いちばん整理しにくい理由

職場が難しいのは、関わるかどうかを自分で決められないからです。
友人であれば、誘いを断り、返信を遅らせているうちに関係は自然と薄れていきます。ところが職場では、苦手な相手とも仕事の話をしなければなりません。同じ会議に出て、同じフロアで一日の大半を過ごします。
もうひとつ、関係を悪くしたときの影響が大きいという事情もあります。相手が上司なら評価に響くかもしれません。露骨に避ければ周囲が気づき、職場全体の空気が変わってしまうこともあります。距離を置きたい、けれど置いたあとが怖い。この板挟みそのものが、また消耗を生みます。
ここで多くの方がつまずくのは、距離を置く=相手を避けるという発想から抜け出せないところです。避けるという方法は、いきなり最終段階に踏み込むやり方です。実際には、その手前に打てる手がいくつもあります。

●第1段階:反応の温度を下げる
最初に試していただきたいのは、相手の言動に対する自分の反応を、一段だけ弱めることです。
苦手な相手ほど、私たちは機嫌を損ねないように過剰に応じてしまいます。メッセージが来ればすぐに返す。面白くない冗談にも大きく笑う。愚痴を聞かされれば、深くうなずいて相手の感情まで引き受ける。こうした反応は、相手にとって「この人はいつでも応じてくれる」という合図になり、結果として関わりを呼び込みます。
返信を三十分置いてから送る。相づちを「そうなんですね」に留める。感情的な話には共感を返さず、事実の部分だけを受け取る。無視をするわけではないので、相手にも周囲にも変化はほとんど気づかれません。それでいて、やりとりの主導権は少しずつ自分の側に戻ってきます。 この段階だけで楽になる方は、実は少なくありません。まずはここで様子を見てください。

●第2段階:話す内容を浅くする
第1段階で足りないと感じたら、次は話題の深さを調整します。
天気の話も、業務の話もします。けれど家族のこと、休日の予定、体調や悩みごとといった個人的な話題は渡さない。この線引きを決めておくだけです。
自分のことを話さないのは冷たいことのように感じるかもしれませんが、そうではありません。何をどこまで話すかを決める権利は、いつでもあなたの側にあります。相手の話は今まで通り聞きながら、自分の情報だけを控えめにする。踏み込まれる感覚は、これでかなり減っていきます。
すでに個人的なことを話してしまっている相手には、話題を過去のことに寄せていくのが自然です。進行中の出来事を渡さなければ、相手が入ってこられる余地は少しずつ狭くなります。

●第3段階:接触の量を減らす
それでも消耗が続くようであれば、接触そのものを減らします。ここが最後の段階です。
まず、減らせない接触と減らせる接触を分けてみてください。業務上必要なやりとりは減らせません。しかしランチ、休憩時間の同席、始業前の雑談、飲み会。任意の接触は、思っているよりたくさん残っています。
このとき大切なのは、その人だけを避ける形にしないことです。「今日は席で作業します」「最近は昼を短めにしているんです」というように、自分の過ごし方が変わったという形にしておくと、角が立ちません。相手にも、周囲にも、特定の誰かを避けているようには見えなくなります。

やってはいけない距離の置き方

一方で、避けたほうがいい方法もあります。

●無視をする
挨拶を返さない、話しかけられても答えない。こうした対応は、相手に伝わる前に周囲へ伝わります。そして立場が悪くなるのは、たいてい距離を置こうとした側です。無視は距離を置く方法ではなく、新しい問題をつくる方法だと考えてください。

●態度で示す
目を合わせない、そっけない返事をする、ため息をつく。態度は言葉より強く伝わり、しかも取り消しがききません。挨拶と必要な業務連絡は今まで通りに保ったまま、反応・話題・接触だけを静かに変えていくほうが、確実で消耗も少ない方法です。

●急に変える
昨日まで毎日一緒に昼を食べていた相手を、今日から避ければ、相手は必ず理由を探します。二週間、一か月と時間をかければ、多くの場合は「最近忙しいのかな」で収まります。急がないことが、結局はいちばん確実です。

●頭のなかで相手を悪者にする
距離を置く理由を自分に納得させようとして、相手の欠点を数え上げてしまうことがあります。けれど、それをするほど、その人のことを考える時間が増えていきます。合わない、疲れる。理由としては、それで足りています。

距離を置いたあとに、回復する時間をつくる

切れない相手がいる以上、消耗がゼロになることはありません。だからこそ、退勤後や休日に、その人のことを考えずに済む時間を意識してつくることが大切です。
帰宅してからも職場のやりとりを反芻してしまう方は多いのですが、これは相手と離れている時間まで相手に使っている状態です。運動でも、家事でも、手を動かす作業でかまいません。頭が別のことで埋まる時間を一日のどこかに置くだけで、翌日の消耗がずいぶん変わります。距離を置く工夫と同じくらい、こちらにも効果があります。

よくあるお悩み

Q. 距離を置いたことで、相手に嫌われませんか
A. 反応の温度を下げる段階では、相手が変化に気づくことはほとんどありません。接触を減らす段階まで進む場合も、時間をかけて自分の過ごし方を変える形にしておけば、特定の誰かを避けているようには見えません。急がないことが、そのまま角を立てない工夫になります。

Q. 気にしないようにしようと思っても、考えてしまいます
A. 考えないようにしようとするほど、その対象は頭に残ります。有効なのは、考えないことを目指すのではなく、考える時間を減らすことです。前の項目で紹介した回復の時間を確保するほうが、結果として早く楽になります。

Q. 相手が上司で、業務上どうしても関わります
A. 業務連絡は減らせませんが、その中でも調整できる部分はあります。口頭ではなくメールやチャットに寄せる、要件だけを簡潔に伝える、雑談の時間を業務の話で埋める。関わる回数ではなく、一回あたりの深さを変えていく発想です。

それでもつらさが続くときは

工夫をしても疲れが抜けない。朝から気が重い。帰宅してもその人のことを考えてしまい、眠りが浅い。こうした状態が何週間も続いているときは、距離の置き方だけの問題ではなくなっていることがあります。
また、相手の言動が業務上必要な範囲を明らかに超えている場合は、距離を置く工夫よりも先に、社内の相談窓口や信頼できる上司に共有してください。一人で抱えて我慢することは、対処法ではありません。

自分がいまどのあたりにいるのか、どこまでが自分で調整できる範囲なのか。それを整理するだけでも、気持ちはずいぶん軽くなります。ICカウンセリングでは、公認心理師・臨床心理士がお話をうかがっています。職場では誰にも言えずにいることがあれば、一度ご相談ください。

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