では、なぜSNSに居場所があるのに、不安や寂しさが消えないのでしょうか。SNSが悪いからではありません。理由は、大きく3つあります。
●理由1:他人の投稿の「光が当たっている部分」と比べている
SNSを開くと、誰かの楽しそうな週末、仲間との食事、旅行先の景色が流れてきます。それを見ているうちに、「みんなはリアルが充実しているのに、自分にはSNSしかない」という気持ちになっていく。これが、不安のいちばん大きな源です。
けれど、少し立ち止まって考えてみてください。SNSに載っているのは、その人の生活のうち、いちばん光が当たっている部分だけです。うまくいかなかっ
た日、ひとりで過ごした夜、誰にも言えない悩みは、投稿されません。写真の外側には、あなたと同じように迷ったり、寂しさを感じたりしている時間が、必ずあります。
人は自分と他人を比べずにはいられない生き物で、これは心理学で社会的比較と呼ばれる、ごく自然な働きです(Festinger, 1954)。ただ、SNSでは比べる相手の「編集された一面」しか見えません。実際に、SNSをよく使う人ほど「他の人は自分より幸せで、いい人生を送っている」と感じやすいことが報告されています(Chou & Edge, 2012)。誰かの光の部分だけを見て、自分の全部と比べる。その比べ方で悲しくなっても、それは公平な比較ではありません。あなたが劣っている証拠には、なり得ないのです。
●理由2:居場所が「一つしかない」
居場所が一つだけだと、そこでの評価がそのまま自分の価値になってしまいます。投稿に反応が少なかった日、フォロワーが減った日、誰かの何気ない一言が刺さった日。逃げ場がないので、その痛みをそのまま抱えて眠ることになります。職場でも家庭でも、居場所が一つしかない人が同じように苦しくなるのと、構造は同じです。
●理由3:「眺めるだけ」の使い方になっている
もう一つ、SNSの「使い方」の問題があります。研究では、SNSやインターネットの利用が孤独感を強めるかどうかは、利用時間の長さよりも使い方で分かれることが示されています。既存の関係を保ったり新しい関係をつくったりするために使う場合は孤独感が下がりやすく、現実から逃げるために使う場合は孤独感が上がりやすい(Nowland, Necka & Cacioppo, 2018)。また、投稿や返信をせずにタイムラインを眺めるだけの「受動的な利用」は、気分を下げやすいことも報告されています(Verduyn et al., 2015)。眺めるだけの時間は、理由1の「比べる時間」にもなりやすいのです。