学校・不登校

「登校しぶり」が出た夏休み明け、親が1週間で整える

そろそろ学校が始まります。宿題は、終わっているでしょうか。

夏休みのあいだに完全に学校へ行かなくなったお子さまも、行ったり行かなかったりを続けているお子さまも、学期が始まるタイミングは、学校とつながり直しやすい時期です。クラス全員が同じところから再スタートするので、休んでいた期間が目立ちにくく、本人にとっても入り直しやすい区切りになります。

小学生の子どもを持つ30代から40代の保護者の方から、この時期に「新学期から行ってくれるでしょうか」というご相談をよくいただきます。夏休みのあいだは家で穏やかに過ごせていたのに、8月の終わりが近づくにつれて口数が減り、朝起きてこなくなる。そうしたご様子を心配されている方が多くいらっしゃいます

今回は、少し行き渋りのあるお子さまに向けた、夏休み明けの準備についてご紹介します。

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行き渋りは、めずらしいことではありません

まず、数字を見ておきたいと思います。

文部科学省が2025年10月に公表した令和6年度の調査によると、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人でした。内訳は小学校が137,704人、中学校が216,266人です。12年連続で増えており、過去最多となっています。児童生徒1,000人あたりに直すと38.6人。おおよそ26人に1人という計算になりますから、40人学級であればクラスに1人か2人はいる、という規模です。

ここでいう「不登校」は年間30日以上欠席した子どもを指すため、行ったり行かなかったりのお子さまはこの数字に入っていないこともあります。実際に登校に迷いを抱えている子どもは、これよりさらに多いと考えたほうが実態に近いでしょう。

同じ調査では、教員が把握した「学校に行きづらい理由」も集計されています。小・中学校で最も多かったのは「学校生活に対してやる気が出ない」で30.1%、次いで「生活リズムの不調」が25.0%、「不安・抑うつ」が24.3%でした。

注目していただきたいのは、2番目に生活リズムが挙がっている点です。理由の上位に、家庭で手を打てる要素が入っています。これが、夏休み明けの準備に意味がある理由です。

なお、文部科学省は令和元年10月の通知で、不登校への支援について「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではない、という考え方を示しています。あわせて、不登校を問題行動と判断してはならないことも明記されています。これから紹介する準備も、登校を強いるためのものではなく、行きたい気持ちが出てきたときに動きやすくしておくための準備だとお考えください。

準備1:生活のリズムを戻す

夏休みはどうしても夜型になります。起きる時間が遅くなり、そのぶん眠る時間も後ろにずれていきます。この状態のまま新学期を迎えると、初日の朝がいちばん高いハードルになってしまいます。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間の睡眠を確保することが推奨されています。仮に朝7時に起きるのであれば、小学生は夜9時前後には眠りに入っている必要がある、という計算です。夏休みの生活と比べて、どのくらいずれているかを一度確認してみてください。

戻し方のポイントは、眠る時間ではなく起きる時間から先に整えることです。夜早く寝かせようとしても、体が眠くならなければ横になっているだけになります。それよりも、起きる時間を少しずつ前倒しにするほうが確実です。

同じガイドでは、朝に太陽の光を浴びること、朝食をしっかりとることが、睡眠と覚醒のリズムをつくるうえで重要だとされています。起こしたらまずカーテンを開ける、朝ごはんを一緒に食べる。この2つを添えるだけで、体は目覚めやすくなります。反対に、夜ふかしが習慣になると朝起きること自体が難しくなるとも指摘されています。

いきなり学校と同じ時刻にする必要はありません。今より30分早く起こす日を数日続け、慣れてきたらもう30分。夏休みの最終日に一気に整えようとすると、前の晩に眠れなくなり、初日の朝から体調がすぐれないという流れになりがちです。少なくとも数日前から手をつけておきたいところです。

準備2:学校に持っていくものをそろえる

行き渋りのあるお子さまには、まわりの様子に敏感なお子さまが多くいらっしゃいます。

いまの学校は、宿題ができなかった理由をきちんと伝えれば、理解してくださるところが多いはずです。ですから、大人の側から見れば「終わっていなくても大丈夫」なのですが、問題はお子さま自身の受け止め方にあります。みんなが出しているものを自分だけ出せない。その負い目が、学校へ向かう気持ちを下げてしまいます。

先ほどの調査で最も多かった理由が「学校生活に対してやる気が出ない」だったことを思い出してください。やる気が出ないという状態の中身は、多くの場合、漠然とした気の重さの積み重ねです。持ち物がそろっていないという一点が、その重さを何段階か押し上げてしまうことがあります。

ですので、学校に提出するものは、できるだけそろえて持たせてあげてください。おうちの方が手伝ってかまいません。丸つけを一緒にする、工作の材料を用意する、感想文の下書きを一緒に考える。こうした手助けは、甘やかしではありません。行くための条件を整えている、と考えていただければと思います。

どうしても間に合わないものがある場合は、先に学校へ連絡を入れておくと安心です。本人が気にしているので初日に強く指摘しないでほしい、と一言添えておくだけで、教室での声のかけられ方が変わります。

準備3:勉強の遅れをフォローする

学勉強がわからないことも、学校に行きたくない理由になります。

大人でも、同じような経験があるのではないでしょうか。運動でも、無理なくできる内容なら意欲的に取り組めますが、ついていくのがやっとの状態が続くと、だんだんやりたくなくなってきます。子どもの勉強もこれと同じです。

少し取り組めば「わかった」と感じられて、小テストでも本テストでも結果が伸びていけば、意欲は自然と上がっていきます。反対に、やってもわからない、結果も出ないという状態が続くと、机に向かうこと自体がつらくなり、その延長線上に「学校に行きたくない」が出てきます。

この点は、より深刻な場面のデータからも裏づけられます。文部科学省が令和8年7月に出した通知では、令和7年の児童生徒の自殺について、原因・動機のうち学校問題に分類されたものの約6割が、学業不振や入試・進路に関する悩みだったことが報告されています。勉強のつまずきは、本人にとって決して小さな問題ではないということです。

学習が少し厳しいかもしれない、と感じていらっしゃるなら、夏休み明けのフォロー体制をもう一度練り直してみてください。

●つまずいている単元を特定する 学年全体が難しいというより、ある単元で止まっていることのほうが多いものです。算数なら分数や単位、国語なら漢字の特定学年など、どこで止まっているかがわかると、やることが一気に絞れます。

●量ではなく「できた」を優先する 遅れを取り戻そうとして量を増やすと、逆効果になることがあります。この時期は、短くても最後までやり切れる量にして、わかったという感覚を積むほうを優先してください。

●家庭だけで抱えない 学校の補習、放課後の支援、校内教育支援センター、通級指導、塾や家庭教師など、使える手はいくつかあります。おうちの方が教えようとすると、親子の関係のほうが先に消耗してしまうこともあります。外に任せられる部分は任せてかまいません。

やってはいけない対応

一方で、この時期に避けたい関わり方もあります。

●初日から完璧を求める
朝から給食を食べて放課後まで、と最初から求めると、達成できなかったときに「やっぱり無理だった」という記憶だけが残ります。1時間だけ、保健室まで、玄関まで。段階を分けておくほうが、次につながります。

●「みんな行っているよ」と比べる
まわりと比べる言葉は、敏感なお子さまほど強く響きます。行けない自分が悪いのだ、という結論に向かってしまい、話してくれなくなります。先ほど見たとおり、行き渋りは26人に1人の規模で起きていることです。特別なことではありません。

●理由を問い詰める
どうして行きたくないのか、と繰り返し尋ねても、本人にも言葉にできていないことがほとんどです。文部科学省の調査でも、理由の上位は「やる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」といった、本人が説明しづらい状態が占めています。理由を聞き出すことより、明日の朝どうするかを一緒に決めるほうが現実的です。

●前の日の夜に結論を出させる
夜は不安が大きくなる時間帯です。「明日は行くの」と夜に確認すると、行かないという答えが出やすくなります。決めるというより、行くのは当たり前のこととして、あまり触れることなく、朝になって子どもの状態をみてから決める、という形にしておくほうが動けます。

8月の終わりから9月にかけて、気をつけたいこと

この時期について、もうひとつお伝えしておきたいことがあります。
文部科学省は毎年、長期休業明けに向けた通知を出しています。そこでは、平成21年以降のデータで、児童生徒の自殺者数が8月後半から増え、長期休業明けの9月1日に多くなる傾向があることが示されています。北海道・東北地方では、長期休業明けが1〜2週間早いことと関連して、増加時期も2週間ほど早くなるとされています。

つまり、夏休みの終わりから新学期にかけては、子どもにとって心の負荷が高まりやすい時期だということです。生活リズムを整えることも、提出物をそろえることも大切ですが、それらはすべて、行かせるための手段ではありません。追い込むための準備になってしまっては本末転倒です。

お子さまの様子がいつもと違うと感じたときは、準備の話をいったん脇に置いて、学校を休むという選択肢が家にあることを、言葉にして伝えてあげてください。逃げ場がある、と本人がわかっていることが、この時期にはいちばんの支えになります。

よくあるお悩み

Q. 新学期の初日から行かせるべきでしょうか
A. 行けるようであれば、初日は区切りとして有効です。ただ、全日でなくてもかまいません。始業式だけ出る、途中から行く、荷物を届けに行くなど、学校に足を運んだという事実が残る形であれば十分です。初日に少しでも入れると、二日目以降のハードルが下がります。

Q. 起こしても起きてきません
A. 眠っているというより、起きたくないという状態のことがあります。無理に起こし続けると、朝の時間が対立で終わってしまいます。まずは、起こす時刻を一定にすることを優先してください。睡眠ガイドでも、朝の光と朝食がリズムづくりの要とされています。起こし方そのものは、お子さまによって合うものが違います。声をかければ起きられるお子さまもいれば、そうできないお子さまもいますので、ご様子を見て決めていただき、決めたやり方は変えずに続けてください。

Q. 宿題を手伝うと、本人のためにならない気がします
A. 通常の時期であれば、その考え方は大切です。ただ、いまは学校につながり直すことが優先されます。持ち物がそろっている状態で登校できたという経験のほうが、この時期には価値があります。手伝う範囲は、落ち着いてきてから戻していけば十分です。

Q. 休んでしまうと、勉強が完全に遅れませんか
A. 学校を休んでいる期間の学びを、学校側が評価する仕組みが広がっています。令和6年度の調査では、学校外の機関などで相談・指導を受けて指導要録上の出席扱いとなった児童生徒が42,978人、自宅でICTを活用した学習で出席扱いとなった児童生徒が13,261人と報告されています。休むことと学びが止まることは、いまはイコールではありません。担任の先生に確認してみてください。

それでもつらさが続くときは

工夫をしても朝の状態が変わらない。学校の話が出るとお腹や頭が痛くなる。食欲や眠りに変化が出ている。こうしたご様子が何週間も続いているときは、生活の整え方だけの問題ではなくなっていることがあります。

また、学校でのできごとがきっかけになっている場合は、家庭での準備よりも先に、担任の先生やスクールカウンセラーへ状況を共有してください。おうちの方だけで抱え込むことは、対処法ではありません。

お子さまの様子に強い不安を感じられたときは、公的な相談窓口もご利用いただけます。文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」(0120-0-78310)は、子どもからも保護者からも、24時間相談できる窓口です。

お子さまがいまどのあたりにいるのか、どこまでがご家庭で調整できる範囲なのか。それを整理するだけでも、朝の向き合い方はずいぶん変わります。ICカウンセリングでは、公認心理師・臨床心理士がお話をうかがっています。まわりには相談しにくいと感じていらっしゃることがあれば、一度ご相談ください。

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